モンマルトルに40年

モンマルトル 登り続け、描き続けた40年

CDG空港からパリに近づくと見えてくるのが、モンマルトルの丘。白く高くそびえるサクレクール寺院が、パリに来たことを教えてくれます。丘には、パリ唯一のブドウ畑があったり、シャンソン酒場で有名なラ・パン・アジルがあったり、そして、似顔絵描きが集い、日々賑わうテルトル広場があったりします。

このテルトル広場で似顔絵を描くアーティストの国籍は様々。広場で似顔絵を描いても、彼らの得意とするものは別にあったりします。日本人のアーティストもかつてはたくさんいたようですが、だんだん減ってきました。

その中で、ずっとモンマルトルに登り続け、似顔絵を描き続けた日本人がいました。

 20才でパリに来て、約40年。
「40年前は、凱旋門もちょっとすすがかかった黒っぽい色だったよ。そんなパリの景色が好きだったねえ。」
と語っていた日本人画家は、寒い冬の日、突然亡くなりました。

40年間、パリ、モンマルトルを見つめ続けた日本人画家。テルトル広場にはもういないけど、彼に描いてもらった似顔絵を大切にしている人は、世界中にたくさんいるはずです。

その日本人画家のように、夢を抱いてパリにやって来た絵描き一人ひとりに、物語があることを感じさせてくれる場所が、このモンマルトルでもあります。